
不要不急の外出は控えろと言われています。映画を観に行くなんてのは、客観的には不要不急の部類に入るとは思うんだが、それを不要不急というのか言わないのかは本人が決めることだろうと。むしろこういうご時世だからこそ、これは!と思ったときにはお金と時間を使うものなんだと思う。

ことの発端は、この記事かな。探したら、舞台挨拶の動画もあるね。

主演の尾野真千子のことは、大河ドラマ「麒麟が来る」で知りました。伊呂波太夫の役の人が、気になってねぇ。そんなにテレビを見る方じゃないので俳優や女優のこともそんなに知ってる方ではないと思うんだけど、だからかなぁ、パッと見て気になる感じの人ってのはいるものなんです。そういえば同じく大河ドラマの「風林火山」で見た貫地谷しほりも、ちょっと見ただけで気になったなぁ。最初の数回だけ出てきて、あっという間に死んじゃう役なんだけど、演技の存在感が半端なかった。
なんでか貫地谷しほりの話になってしまったけど、尾野真千子ですよ。気になってプロフィールなどを調べたところ、中学生の時に靴箱の掃除をしていたところが映画監督の目にとまって、女優の道を歩み始めたとか。やっぱ、パッと見て気になる何かがあるような人ってのは、いるものなんですよ。そんな人が、伊呂波太夫が、涙ながらにぜひ観てほしいだなんて言われたらねぇ。確か20日の夜に記事を見つけて、そのまま公式サイトも見て、初日の21日に観に行ったんだ。
ネタバレにならない範囲での感想。まずは、今のこの世の理不尽を詰め込んだような映画ってところかな。わたしはたぶん、もともとそういう暗い話が嫌いじゃない。でもね、正味2時間20分くらいなのかなぁ。そのなかでいくつもいくつも、いろんな立場の人から見た今の日本の理不尽が描かれる。で、基本その理不尽そのものに対しては、ちっとも救われない。う〜ん、終盤の神社のシーンとその顛末については、一瞬スッキリするかもしれないけれど、そもそもそういうものを求めて観る映画じゃないんだよ。
次に感じたのは、いい意味で数年後に放送とかされないでほしいなぁと思うことかな。舞台設定が、コロナ禍の今なので。だから普通にマスクを付けている人もバンバン出てくるし、喫茶店でまずいコーヒーを飲むシーンでも間に透明のアクリル板がある。濃厚なサービスが尊いお店の中には「濃厚接触実施中」の文字も。後世の人が見たら、いろんな描写に???がつくと思う。でもそれは言い換えると、今こそ観て欲しい映画だから。
で、コロナ禍の今の、どうにもならない理不尽が徹底的に描かれるわけですよ。別に最後に、キラキラした感動のラストがあるわけじゃない。茜色の空でさえ、救いようのないものの例えに見える。正直、人によってはなんだかもやもやした後味が残るかもって思うくらいです。でもね、どんなに理不尽なことがあろうとも、それに無理に耐える必要なんてないけれど、それでもできることをできる範囲でがんばりながら人は生きていくんだよってのが根底に流れるテーマなんだと思う。そして、「どんな時も手放さないもの」(を言っちゃうとネタバレになるのでパス)について、思いを寄せるってのが、わたしの解釈かなぁ。
だから舞台挨拶の尾野真千子の涙も、納得のいい映画です。回し者ではありませんが、ぜひ映画館で観て欲しい映画です。もう1回観て、映画を噛み締めながら、そのまま夜道を当てもなく走り回るのがいいかもね。あっ、別に、心を病みそうになってるとかではないですよ。事実わたしは、帰りのクルマの中で、そっかこの映画のテーマはここにあったんだ!って思ったくらいなので。まぁ、別に、ちっとも明るい話ではないんだけど、それぞれの解釈でお楽しみいただけたらと思います。