2012年10月14日

8月31日 夏休み最後の日

 ユーミンと貫地谷しほりのステージを、帝国劇場で観てきました。それに付随していろいろあるのですが、それは別項にて。とか言いながら放置されちゃったりして。


 ネタバレにならない範囲での感想。シンガーソングライターがお芝居と楽曲を融合したステージをやると聞くと、真っ先に思い浮かぶのが中島みゆきの「夜会」。音楽とお芝居の融合と聞くと、ミュージカルを思い浮かべる人も多いと思います。しかし、そうした既存のものとは違うものをやるということと、ユーミンなのできっと、もっと大衆的でわかりやすいところを突いてくるだろう。そんなふうに思っていました。

 見終えての感想としては、まさにその通りでした。そうねぇ、「夜会」が、ノーベル文学賞も取っちゃうような文豪の作品だとすると、「8月31日 夏休み最後の日」はそういうものではないけれど、文学の不勉強な人にわからないと言われることはないかなって感じ。ネタバレの部分で後述しますが、正直「ここまでベタな展開でいいの!?」と思うくらいにベタで、直球ど真ん中な筋書きで来ます。あるところでは「ユーミンの信奉者にしか楽しめない」と書かれていましたし、いわゆるセットリストだけを見ると確かにそう思われそうな面はあります。でも、たとえ楽曲を知らなくても、ストーリーと楽曲の融合は見事としか言いようがありません。


 で、以下は、ストーリーの内容を含むネタバレと個人的解釈や感想など。なお、別のあるところでは「パンフは開演前に開けてはいけません」というのも見たので、あえてパンフも、おまけのCDも聴かないでこれを書いています。理由は・・・、人の記憶は、変わっていくからかな。観て、24時間くらい経った段階の今を、綴ってみようと思います。






【以下、ネタバレです】

 8月31日、ひき逃げ事故で意識不明の重傷を負った和彦(吉沢悠)のもとに、千佳(貫地谷しほり)が呼び寄せられる。今夜がヤマだというが、和彦自身の所持物などから得られた唯一の情報が、千佳の携帯番号を記したメモ。そこで、警察は千佳を呼び出したのだった。

 ところが千佳は、和彦とは何の関係もないという。正確には1年前に別れて、それきり連絡を取って来なかった元カレ、元カノの関係だった。ベッドの上で動かない和彦。突然のできごとや、これまでのいろいろがあってか戸惑い気味の千佳。それでも和彦に呼ばれた気がした千佳は、ベッドの横に座っているうちに眠ってしまう。眠りについた千佳が見たものは、和彦の意識の中の世界、和彦の見る夢の世界だった。

 和彦の意識の中だから、和彦の容姿や声ですら和彦が支配している。そのため千佳には、目の前の男性が和彦であることが信じられなかった。それでも、つきあってきた3年間の思い出をつきあわせるうちに、千佳は目の前の男性が和彦であることを認識していく。そして振り返られていく、ふたりの出会い。和彦と千佳が出会う前に、和彦がつきあっていた冴子(陽月華)のこと。

 そうするうちに1年前、ふたりがどうすれ違って別れたのか、までも、和彦と千佳のそれぞれが認識していく。千佳の知らなかった和彦。和彦の知らなかった千佳。その両方を知る冴子。別れたのは、ほんの小さなすれ違いだったのかもしれない。いや、ほんの小さなすれ違いだったんだ。どうしてそれに気づかなかったのか。ねぇ、今なら、やり直せるんじゃない?

 しかし和彦に残された時間は、わずかだった。一緒に行こうという千佳に対し、疲れたから休みたいと言う和彦。あとから行くからと言う和彦に対して、和彦がいないとダメなのと言う千佳。そして、現実の世界では、ベッドの横の椅子で和彦に寄り添うように眠っていた千佳の夢が、強制的に破られる。千佳が現実の世界で見たものは、容態の急変した和彦と、慌ただしく処置をする医師や看護師。そして、和彦の最後の姿だった・・・。


 とまぁ、大筋ではこういう内容です。やっぱり好きだったんだということに気づいても、もう相手はどうにも手の届かないところにいるという、鉄板のパターンですな。ある程度以上の年齢で、人としてまっとうな恋愛をしてきたなら、誰もが通る道だと思うのはわたしだけなのでしょうか。えぇ、そんな道、何度も何度も通った気がするので(爆)。

 底流に流れるテーマも、いくつかあると思うんです。結果がすべてか、それとも、結果そのものには何の意味もないのか。自分の夢を追うのか、それとも、たとえ妥協を迫られてでもふたりの夢を追うのか。そして、人の記憶は変わっていくということ。その、何らかの事情で変えられていった記憶を、人はきっと歴史とか、思い出などと名付けるのだろう。

 ユーミンの楽曲は、もうその場面のために書かれたんですか!?と思うほど、見事にリンクしています。そしてユーミンの立ち位置は、基本的には歌でナレーションをしている感じとでも言えばいいのでしょうか。それでも時折、出演者のひとりとしての姿を見せます。ある時は、報道関係にも出ていた通り、看護師に。またある時は、ホテルのレストランの一角で、生演奏の弾き語りをする登場人物に。

 やられた〜!と思ったのは、クライマックスのAnniversary。基本的には歌うときは黒子のようってわけじゃないけど、黒い服で登場します。ところがこの時だけは、白い服。このシーンについては、なんにも言えないって感じ。ただただ涙が出ます。周囲からもすすり泣く声が聞こえました。


 ここで終わってしまったら救われない話になっちゃうので、最後は青いエアメイル。これなしに終わったら、終演後のごはんがおいしくなくなるんじゃないのかなぁ。これを書きながら、シャングリラ3での「Carry on」のことを思い出しました。悲しいけれど、人は恋が終わったと思うだろうけど、それでもその人のなかで恋は続いていくんだよってね。

 なおダブルコールは、「卒業写真」でした。貫地谷しほりと、陽月華と、ユーミンの、3人のハモリがキレイです。ユーミンって歌はそんなにうまくないと思うんだけど(爆)、それでも仕事として歌っている人と、仕事としては歌っていない貫地谷しほりとは、違うんだなって思いました。でも、感情の入れ方はさすが女優ですな。そして上手い下手だけで論じれば、陽月華は女優も歌も仕事でやってきた人だから、うまいのは当然のごとしって感じでした。
posted by てつりん at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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